※本日はこども祝福式だったので子ども向けの紙芝居を使ったメッセージにしました。
五郎くんちのホットケーキ(ピリピ人への手紙2:6-8)
五郎くんは男ばかりの5人兄弟の長男、5年生です。お父さんもお母さんも朝早くから夜遅くまで働いていていたので、晩ご飯はいつもとても遅くなってしまいます。だからみんなが学校や保育園から帰ってくるころには、もうおなかがペコペコ。そこで五郎くんがいつもホットケーキを作ります。
「おい、フライパンを持って来い!」「はい!」「あと、ホットケーキミックス、卵、牛乳、それとバターもな。」「はい!」「はい!」「ボールに泡だて器、フライ返しも忘れるな!」「はーい!」みんなおなかが空いているのでよく言うことをききます。
ボールに卵と牛乳を入れてよく混ぜます。そしてホットケーキミックスを入れてざっくりとかき混ぜて、生地がふんわりなめらかになったら、フライパンにバターをしきます。「よ~し!流し込むぞ!」ジュワーッ!!いいにおいがしてきます。
弟たちは一斉にフライパンを覗き込みます。「兄ちゃん、兄ちゃん、いいにおいがしてきたな。」「もうひっくり返してもいいんじゃない?」「まだまだだ。ぷつぷつ泡が出てくるまで我慢だ。」「おっ、いい感じに焼けてきたぞ。さて、ひっくり返すか。よっ!」「兄ちゃん、いい色だな~!」「ああ、もうすぐできるからな。」
さあ、ホットケーキが出来上がりました。大きなお皿を出して、ホットケーキを載せます。「さあ、切るぞ!」「兄ちゃん、公平にな。」「わかってるよ。」でも、5等分って難しいのです。切り終わると大きいの、小さいの様々です。
「小さいお皿を5枚持って来い!」「兄ちゃん、ぼくこれ!この大きいの!」ちびが言います。「だめだめ!一番大きいのは、一番大きい兄ちゃんがもらうに決まってるだろ!」「え~、ずるいよ!」「二番目に大きいのが二番目。三番目に大きいのが3番目、4番目に大きいのが4番目。そして一番小さいのはチビ、おまえのだ。」
「やだ~!僕のこんなに小さいよ。お兄ちゃんのと取り替えてよ!」「だめだ!お前はチビなんだから一番小さいのでいいんだよ!」「やだ!やだ!大きいのがほしい!」「うるさい!!」五郎はゴツンとチビの頭を叩きます。ちびはわーっと大きな声で泣き出しました。これが五郎くんのお家の毎日でした。
さて、五郎くんは教会学校に行っています。毎週みんなでゲームをしたり、賛美をしたり、聖書のお話を聞いたりするのが大好きなのです。教会学校の先生も大好きです。五郎くんの分級の先生は若くて優しい女の先生。五郎くんの大好きな先生です。
ある日先生が、五郎くんに話しかけました。「五郎くんは、何人兄弟なの?」「五人兄弟で~す!」「5人?多いのね。…わかった、五郎くんの名前からすると、5番目ね!」「ちがうよ。一番目、長男だよ。」「そうなんだ。ところで五郎君の兄弟は仲良しなの?」「全然、いつもけんかだよ。」「え~?何で?」「チビがうるさくて泣くんだ。」「何で泣くの?先生に話してみて。」「実は…」五郎くんは、お父さんお母さんの帰りが毎日遅いこと。だから、みんなでホットケーキを作って食べること。でもできたホットケーキを切ると大きい小さいができて、それがもとでけんかになることを詳しく話しました。
「ふ~ん、そうなんだ。」先生は少し考えた後で、こんな提案をしました。「ねえ、ねえ、五郎くん。明日から1週間は、五郎くんが一番小さいホットケーキを食べることにしない?」「え~!やだよ!僕は一番大きいんだよ。大きいのが食べたいよ。」「じゃ、五郎くん、もし1週間我慢して一番小さいホットケーキを取ったら、先生五郎くんにシュークリーム5個買ってあげる。それでどう?」「えっ?シュークリーム5個?一人で5個も食べれるの?う~ん。…わかった!僕やってみるよ!」
さて、月曜日みんな学校から帰って来ました。「よし!ホットケーキを作るぞ!」「フライパン持って来い!あと、卵、牛乳、ホットケーキミックス、バター…!」「よし、焼くぞ!」ジュワーッ。今日もきれいなホットケーキが出来上がりました。「さあ、切るぞ!」五郎くんはいつになく慎重に切ります。でも、やっぱり五等分は難しい。微妙に大きさに違いが出ました。「じゃあ、この大きいのは…」「ぼく!ぼく!」チビが泣きそうな声で大騒ぎします。「よし、チビにあげよう。二番目に大きいのが4番目、3番目に大きいのが3番目(三番目はいつもいっしょ。笑)4番目に大きいのが二番目。そして一番小さいのがオレだ。」
みんな、唖然として五郎を見ています。「なんだ、なんだ。早く食べろよ。」「兄ちゃん、どうしたの?」「おなかでも壊したの?」「いや俺にはシュー…いやいや、何でもない、兄ちゃんあんまりおなか空いてないんだ。早く食べろ。」二番目と三番目はこそこそ言っています。「兄ちゃん意地汚いから、きっと何か変なもん食って、腹壊してんだよ。ははは。」それでも、みんな嬉しくて、特にチビは大喜びでホットケーキを食べました。今日はけんかもチビが泣き叫ぶ声もありません。
次の日もホットケーキを焼きました。そして一番大きいのをチビに、二番目に大きいのを4番目に、三番目に大きいのは三番目、四番目に大木のを二番目。そして今日も五郎くんは一番小さいのを取りました。「兄ちゃん、いいの?」「いいんだ、いいんだ、気にするな。」3日目、4日も続きます。そうすると家の中が変わって来ました。あんなにうるさかったチビも最近はいつもにこにこして、お兄ちゃんに甘えるようになってきました。そうすると、五郎くんもチビが何だかかわいく思えてくるのでした。そのうち五郎くんは思いました。「シュークリームのために1週間我慢していたけど、何だかもうどうでもよくなっちゃったな。来週からもが小さいのをとるか…。」
そして土曜日最後の日。五郎くんは大きなホットケーキはわざと大きく、小さなホットケーキはわざと小さく切りました。そして大きなホットケーキをチビのお皿に、一番小さいホットケーキを自分のお皿にのせました。弟たちは五郎くんのお皿をのぞき込んでいいます。「兄ちゃん、兄ちゃんのそんなに小さくていいの?」「おなかすいちゃうよ。」「いいんだ、いいんだ。みんな早く食べろよ。」
「兄ちゃん、ぼくの少しあげる!」二番目が自分の分を少し切って、五郎くんのホッとケーキの上にのせました。3番目も「ぼくも!」と言って、やはり自分の分を少し切って五郎くんのお皿にのせました。4番目も「ぼくだって!」と自分の分を少しのせました。チビもみんなを見て「ぼくも、ぼくも!」と自分の口に放り込みかけていたホットケーキのかけらを五郎くんのホットケーキの上にのせました。小さなホットケーキの上に大きなピラミッドができました。
五郎くんは大きなピラミッドとその向こうにいる兄弟たちの笑顔を見ながら、ちょっと涙が出そうになりました。はじめはいやいやはじめたことでした。でも自分が変わった事で兄弟たちも変わったのです。五郎くんはとても幸せな気持ちになりました。
次の日、五郎くんは教会学校に行きました。真っ先に分級の先生のところに行って、1週間のことを報告しました。「そう、よかったわね。これ約束のシュークリーム。五個買ってきたわよ。」「ありがとう、先生!」五郎くんはくるっと振り返ると兄弟たちのところに行きました。「おーい!チビ!シュークリームあるぞ!みんなで一緒に食べようぜ~!」「わーい、お兄ちゃん!」
一番大きくて強い人が小さくて弱い人のようになると、みんなが幸せになるんです。五郎くんが変わったら兄弟が変わったよね。みんなのうちで一番強いのはだれ?お母さん?お父さん?ひょっとして君かな?君が変わると家族が変わるかもよ。
じゃあ、世界中で一番強い人はだれ?菅総理大臣?トランプ大統領?でも一番強い人は神さまだよね。神さまが一番強くて、何でもできるお方。その神様が小さな弱い人間、しかも赤ちゃんになって生まれてくださった。高いところにおられたお方が、低く低くなってくださって、馬や羊のいる家畜小屋で生まれてくださった。それがクリスマスなんだよ。イエスさまは神さまの子で、全世界全宇宙の王様で、大きな大きな力を持っていたのに、その力も位も全部捨て、人間として生まれて、生きてくださったんだよ。みんなみたいにお腹がすいたり、病気になったり、あちこちかゆかったり、痛かったりして一生を過ごして、最後は、十字架にはりつけにされて死んでくださいました。神の子だもの、力はあったのです。十字架に付ける兵士や人々をやっつけることだってできたのです。でもそうしなかった。一番弱く、小さくなってくださいました。それは私たちの罪の罰を私たちに代わって受けるため。イエス様が私たちの代わりに十字架にかかってくださったから、そのことを受け入れて、信じる私たちは喜びをと平安でいっぱいの新しいいのちをいただくことができました。そして、神さまと人が仲良くできるようになりました。
私たちもこの小さく弱くなってくださったイエスさまを心のお迎えしようね。そしてわたしたちも自分が一番の人生じゃなくて、みんなの幸せのためにすこしだけ弱く、小さくなってみましょう。
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