1.
「五郎君VS太郎君」みんなは五郎君を覚えていますか?そう。五郎君は男ばかりの5人兄弟の長男、小学5年生。今回は五郎くんと同級生太郎くんのお話です。
2.
五郎くんのクラスには太郎くんという男の子がいました。この太郎くん、なかなか大変な子でした。からだが大きくて、乱暴で、自分勝手で、何か気に入らない事があるとすぐにどなって、時には手が出たりします。とにかく力が強いので、だれも太郎くんに立ち向える人はいないのです。
3.
ある日のこと、五郎くんがグランドで遊んでいると、太郎くんがやってきて、「ここは俺がサッカーをする場所だ!あっちいけ!」なんて言うのです。五郎くんは思い切って言い返しました。「やだっ!グランドはみんなの場所だぞ!」すると力の強い太郎くんは、「俺に逆らうのか!!」と怒って、五郎くんに関節技をかけてきたのです。「いたたっ!やめろよ!!」まわりで見ている人も、太郎くんが恐くて、誰も助けてくれません。「くそぉぉぉぉ、くやしいよ~。悪いのはあいつなのに。なんで俺が負けるんだよ~」五郎くんはどうすれば太郎君をやっつけられるか考えました。「そうだ!あの人に相談しよう!」…あの人って誰でしょう?
4.
日曜日、ハレルヤタイムに行った五郎くんは、真っ先に牧師先生のところに行きました。「先生~。ぼくのクラスに嫌な奴がいるんだ!やっつけてくれよー」 実は、五郎くんの教会の先生は元プロレスラーでした。体が大きく、筋肉もりもりで、見た目はとっても強そうで、ちょっと怖い感じがするぐらいです。今でも、毎日鍛えているらしい。もちろん心は優しいんですけどね。だからみんなにマッチョ先生って呼ばれていました。
5.
マッチョ先生は五郎くんの話しを頷きながら聞いてくれました。「フムフム、なるほど。五郎くんには敵がいるってわけか…。それならちょうどいい聖書のことばがあるよ」と、聖書を開きました。「五郎くん、‘あなたの敵を愛しなさい’っていう聖書の言葉を知っているかい?」「え?敵を愛する?何それ?敵を好きになてってこと?それだったら無理だよ。」「違う違う、別に好きなる必要ないんだよ。愛するっていうのは、親切にするってことだよ?」「えっ?そうなの?悪い奴なのに?イエスさまって正義の味方じゃないの?悪い奴をやっつけてくれるんじゃないの?」五郎君がそう聞くと、先生は言いました。「なんでだろうね。とにかくイエスさまがそう言ったんだ。イエスさまのご命令はとにかくやってみなきゃ。そうすれば、なんでイエスさまがこんなことをおっしゃったかわかるはずだよ」「ふーん、そんなもんかな~。せめてプロレスの技でも教えてくれりゃいいのになぁ。あの関節技をかわすにはどうしたらいいか…とかさ~」でも、マッチョ先生はニコニコして、「まあ、やってみろっ」というだけで、プロレスのわざを教えてくれそうもありませんでした。五郎くんは「はあ、仕方ないな~」と言いながら、お家に帰っていきました。
6.
次の日の朝、学校に行く途中で、五郎くんは太郎くんに会いました。いつもだったら声もかけずに、さっと通り過ぎるし、この前のケンカの事もあるから、後ろから飛び蹴りでもしたいぐらいだったけど、「うーん。だけど‘敵を愛する’だっけ…。愛するって、親切にするってことだよな?」五郎くんは勇気を振り絞って、「や、やあ、おはよっ」っそう声をかけました。太郎くんはびっくりしたようでしたが、「おう」とだけ答えました。五郎くんは思いました。「やったぜ、俺だってやればできるじゃん!」ちょっと気持ちのいい朝でした。
7.
でも、その後は散々でした。太郎くんは、いつもと同じ。みんなの嫌がることばかりをします。それどころか、五郎くんが、すごーく楽しみにして、最後に食べようと思っていた給食のプリンまでとっちゃったのです。「おまえ、プリン残すのかよ!もったいないな~、嫌いなら俺が食べてやるよ。」「やめろよ、俺のプリン返せよ~」「ありゃ、俺の口の中にプリンがおちちゃったよ~、わり~な~!」「もう!!」五郎くんは、とびかかって殴ってやりたかったけど、それをしてもまたあの関節技でやられるのがオチ。「何が敵を愛せだよ」「何が親切にしろだよ」「まっちょ先生はあいつのことを知らないから、あんなことが言えるんだ!敵なんか愛したって無駄なんだよ。ガツンと一発殴ってやらなきゃ!」
8.
五郎くんはその日も教会に行きました。そして怒りを爆発させました。「やっぱり無理だよ、先生。太郎のやつ、ホントムカツク!今度やられたら、オレ絶対殴ってやる!マッチョ先生、関節技のかわし方教えてよ!」先生は、お茶を出しながら言いました。「そりゃ、自分の力でやろうとしても無理だね。神さまから力をもらわないと。太郎くんに親切にできるようにしてくださいってお祈りするんだよ。さあ、お茶を飲んだら二人でお祈りしようぜ。」
9.
それからも、太郎くんは相変わらず嫌なやつでした。でもある日、太郎くんが教科書を忘れているのを横で見ていた五郎くんは、いつもなら心でざまーみろって思って無視するんだけど、今日はなぜか「しょうがないな~、俺の教科書見る?」と言って、机をくっつけて、教科書を見せてあげました。太郎くんは「おう」って言うだけでお礼も言わなかったけど、ちょっと嬉しそうでした。五郎くんは、そんなことをしている自分がちょっと不思議だったけど、なんだかちょっといい気分でした。
10. さて、掃除の時間です。いつもはサボってばかりいる太郎くんがなぜか今日はちゃんとお掃除をしていました。五郎くんは太郎くんに、「ごめん、ちょっとこの辺履くから、机運んでくれない?」太郎くん、いつもなら「何だと~、俺に命令するなよ」と言うところなのに、なぜか「おう」と言って運んでくれたんです。五郎くんは嬉しくなって、「ありがとう!」って言ってみました。太郎くんは何にも言わなかったけど、そのあと「ふん、ふ~ん♪」なんて鼻歌歌ってから、きっと気持ちよかったんだど思う。その後も、五郎くんのぎこちない声掛けや、小さな小さな親切が続きました。
11. すると、太郎くんも少しずつ変わって来ました。そして、そのうちに「おう」だけじゃなくて、五郎くんにいろいろ話しかけてくるようになりました。そして、五郎くんが消しゴムを忘れた時にも、消しゴムを「おれ二つあるから、今日一つ貸しといてやるよ」って言ったり、「おい、五郎、今日学校から帰ったら遊ぼうぜ」って言ったりするようになったのです。大変化です!知らない間に二人は大のなかよしになりました。
12. さて日曜日!「マッチョ先生、太郎くん連れてきたよ~」「おっ、君が太郎くんか。プロレスうまいんだってな、先生と勝負するか?」「あれ?言ってなかったっけ?先生はもとプロレスラーなんだ。」「えっ?ホント?すげー!!俺になんか技を教えてくださいよ」「プロレスの技かい?先生と五郎は、プロレスの技よりももっと強い技を知ってるんだぜ。」「え?何ですか、それ?」「なっ!?五郎」「うん!」二人はそう言いながら目配せをするのでした。プロレスの技より強い技ってなんだろうね。みんなは、もう知ってるよね。おしまい
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