今日は5人みんなで居間に集まって、なにやらワイワイガヤガヤ話しています。
「もうすぐ待ちに待ったクリスマス。
今年はみんな、サンタさんにどんなプレゼントをお願いするの?」
おもちゃの広告や雑誌を広げて、誰が何を頼むのかおしゃべりしています。
「うーん。ミニカーも欲しいけど、プラモデルも捨てがたい…
ねえ、ねえ、五郎兄ちゃんは何を頼むの?」
「へへん。俺はもう、とーっくの昔に何を頼むか決めてるんだ。
今年は絶対にラジコンヘリコプターだ!
赤くて超かっこいいやつ。ぜったいにこれ!」
五郎君はずっと前から欲しかったラジコンがあったのです。
クリスマスにサンタさんにもらう事をとっても楽しみにしていました。
「サンタさんは今年は一身上の都合により我が家には来られなくなりました。
残念だけど、今年のプレゼントは我慢してくださいね。」
可愛そうな5人兄弟。
チビなんて悲しみのあまり大泣きです。
五郎君だってチビと同じくらい泣きたい気持ちです。
だってあんなに楽しみにしていたんですもの。
教会学校の先生がクリスマスのイエス様誕生のお話をしてくれました。
「イエス様は私達の罪を赦すためにこの世界にお生まれになったのよ。
そのことをお祝いするのがクリスマスですよ。
だからイエス様が最高のクリスマスプレゼントってことね。嬉しいわね。」
部屋の隅でお話を聞いていた五郎君は思いました。
「イエス様は最高のクリスマスプレゼントかもしれないけど、
俺はラジコンだって欲しいもん…
ラジコンのもらえないクリスマスなんてあんまり嬉しくないや…」
五郎君の気持ちはなかなか晴れません。
④教会からの帰り道、五郎君が腐った気持ちで公園を歩いていると、
ブルルルルーンと、遠くから音が聞こえてきました。
見上げるとそこには五郎君が欲しかったラジコンヘリコプターが飛んでいました。
「あ、あれ、俺が欲しかったやつだ!
いいなぁ。やっぱりかっこいいなぁ。
なんだよ、俺よりずっと小さい子が遊んでるじゃんかよ。悔しいなぁ。」
五郎君は羨ましくて羨ましくてしょうがありません。
⑤すると、ラジコンヘリコプターで遊んでいた男の子がヘリを置いて別の遊びをしだしました。
みんな別の事に気を取られて誰もラジコンを見ていません。
その時、五郎君はちょっとラジコンを見ようと近づいて行きました。
…ちょっと触ってみよう。
誰もみていない。
誰もみていない。
なんということでしょう。五郎君は男の子のラジコンヘリコプターを盗んでしまったのです。
心臓がドクドクいっています。
五郎君は急いでそのラジコンヘリコプターを自分の机の一番下の引き出しの中に入れました。
五郎君は全然嬉しくありません。むしろ前よりも、もっともっと心が苦しくなりました。
男の子、今頃泣きながら探しているかな…?
俺が人の物盗んだってみんなが知ったらなんて思うだろう…?
ああ、俺はなんてことをしてしまったんだ…。
⑧次の日曜日、教会学校では先生がイエス様の十字架の話をしてくれました。
「イエス様は私達の罪を赦すために犠牲になってこの苦しい十字架刑をお受けになったの よ。私達の身代わりになって十字架にかかるためにこの世界に来てくださったのね。」
みんなに見られないように後ろの方でこっそり泣いている五郎君に先生は気がつきました。
⑨教会学校が終わった後、先生は誰もいないお部屋で五郎君に何があったのか聞きました。五郎君はもう黙ってはいられないと思い、全部先生にお話ししました。
ラジコンヘリコプターがずっと欲しかったこと。
自分より小さい男の子がラジコンで遊んでいるのが悔しかったこと。
誰も見ていなかったからつい盗んでしまったこと。
でもそれからずっと心が苦しかったこと。
全部全部お話しました。
先生は泣いている五郎君の横でずっと聞いていました。
「そっかぁ、それで最近元気がなかったのね。
五郎君の心が苦しかったのは、神様が五郎君の心とつながっていてくれたからよ。
神様は五郎君に泥棒のままでいてほしくなかったのよ。
今回の事、神様にお祈りして赦していただきましょう。
そしてその男の子にラジコンヘリコプターを返しに行って謝ろう。
先生も一緒に行くから。」
⑩先生は男の子の家を調べてくれました。
五郎君はラジコンを持って謝りにいきました。
男の子のお母さんは優しい人で、勇気を持って謝りに来た五郎君を赦してくれました。
男の子も最初は怒っていたけれど、五郎君が真剣に謝っているのをみて最後は赦してくれました。
心の苦しいのがすーっととれた五郎君。
帰りの足取りはいつになく軽やかです。
五郎君はポツリと言いました。
「先生、イエス様って本当に最高のプレゼントなんだね。」
それを聞いた先生はふふっと笑って自慢げに言いました。
「だから言ったでしょ?」
先生の美味しい料理を食べて、兄弟みんなでたくさん笑って過ごしました。
ラジコンヘリコプターは手に入らなかったけど、優しい先生や楽しい兄弟が周りにいて、そしてイエス様がいて、自分は本当に幸せ者だなぁと思った五郎君でした。
おしまい
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